開催情報
【作家】稲葉周子、桑山忠明、竹内絋三、出和絵理、浜名一憲、サラ・フリン、尹煕倉、李禹煥
【期間】2021年5月8日(土) – 7月10日(土)
*プレス内覧会:2021年5月7日(金)
【開館時間】13:00 – 18:30
【休館日等】日・月休廊
【料金】無料
会場
会場名:艸居アネックス
webサイト:http://gallery-sokyo.jp
アクセス:604-0924 京都市中京区一之船入町375 SSSビル3階
電話番号:Tel: 075-746-4456
概要
艸居アネックスでは企画展「白」を開催いたします。稲葉周子、桑山忠明、竹内紘三、出和絵理、 浜名一憲、サラ・フリン、尹 煕倉、李禹煥の8人の作家による様々な物質や構築方法からなる白の作品を展示し、白が空間で作り出す無限性や白の概念に基づく内面性を提示いたします。
古来から日本人にとって白は特別な意味を持ち、嘘いつわりなくありのままに神様に向き合うための神聖な色でした。その起源として日本の太陽信仰があり、太陽の神である天照大御神が日本を創造した際、天の光が白であったということから、白を神聖視するようになったと考えられています。その後時代を経ながらも、白を最も神聖な色として考える概念は受け継がれていきました。
現代社会においてもこのような白を象徴する概念が息づいています。神社の素木(しらき)造りや、神道の神官の装束、祭祀に使う御幣など白は悪霊や穢れを払う色でもあります。他には生と死 を象徴する白装束、喪服の白、赤ちゃんに着せる産着などがあるように、白は純真無垢を意味し、日本人の美意識の中で最も高貴な階級を表すとともに、厳格で極限の美とみなされています。
そしてまた、白は実験的で無限の表情を表す最も純粋な色です。歌舞伎役者、初代市川團十郎が初めたとされる白塗りは、暗い照明の中で繊細な表情の陰影を伝えるためだと言われています。
白の概念は国や文化によっても異なり、⻄洋では白は純粋、エレガンス、平和、清潔を象徴します。前近代の日韓では、社会の全般に亘って五行説の色彩概念と観念が強く影響を与えていました。五行説とは、中国の戦国時代に発生して理論付けられたものであり、万 物 は 木・火・土・ 金・水の5元素でなっているという考え方です。その5元素には色彩も含まれており、この中で金は白と位置づけされ「涼やかに澄み切り自然が地に返っていく終焉の色」とされています。
このような白の概念を踏まえ、本展では空間において白が作りだす可能性を検証いたします。信楽の自然土を使って強大な壺の中に佇まいを表す浜名一憲。白の釉薬の下に葉脈の流れや枯れ巻く線を描くことで生命の力強さや尊さを表現する稲葉周子。人類の文明を遡り、古来から変わらずあり続ける風景を陶粉画に表す尹煕倉の抽象画。採取した川の砂から作られる顔料は、数えきれないほど微妙に異なる色と濃度で作られ、平面に丁寧に配置されています。一貫して還元主義的な作品を制作をする桑山忠明は実験的な精神のもと作品の素材に関する探求を重ね、純粋な芸術を鑑賞者に体験させます。本展では1961-71年に制作された鳥の子紙を板に巻きつけたアクリルペインティングと71年制作のメタリックペイントを展示いたします。
そして、李禹煥、サラ・フリン、竹内紘三、出和絵理4人による磁器作品。磁器は透光性、硬質、 高い形状記憶という性質があり、乾燥、焼成を経て有機的に変化します。李禹煥はフランスのセーブルにて、フランス産のより白の度合いが強い磁器を使い、焼成という人間が触れることのできない火の力を作品に表しました。サラ・フリンの轆轤で作りだす静かな造形は、純潔な精神をもって作品に取り組む一貫性と、選択を通して厳選されるフリンの世界観を提示します。竹内紘三は構築と破壊の中に生まれる美意識を、出和絵理は磁器の光の透過性にみる神秘的な美を表現します。
本展を通してそれぞれの違う物質が織りなす多様な陰影、白が空間内で作りだす純粋かつ無限の世界をご高覧いただけますと幸いです。
作家紹介:
稲葉 周子(いなば・ちかこ)
1974 年神奈川県横浜市生まれ。2007 年より滋賀県にて制作。1996 年武蔵野美術大学短期大学部デ ザイン科工芸デザイン陶磁コース卒業、2001 年岐阜県多治見市陶磁器意匠研究所修了。2001 年か ら国内外で数多くの個展やグループ展に出品。現代美術 艸居では 2019 年女性3人展「質感」に出 展。受賞歴に 2016 年台湾国際金壺展銀賞(鶯歌、台湾)、2018 年台湾国際金壺展佳作賞(鶯歌、 台湾)などがある。
桑山 忠明(くわやま・ただあき)
1932 年名古屋生まれ。1958 年渡米。その後今日までニューヨークで制作。1956 年東京芸術大学日 本画科卒業。これまでの個展歴に 1985 年北九州市立美術館(北九州、福岡)、1996 年 DIC 川村記 念美術館(佐倉、千葉)、千葉市美術館(千葉)、2000 年ルペルティヌム近代美術館(ザルツブル グ、オーストリア)、2010 年名古屋市美術館(名古屋)、2011 年国立国際美術館(大阪)、金沢 21 世紀美術館(石川)、2012 年神奈川県立近代美術館(葉山、神奈川)など。受賞歴に 1964 年ア ート・イン・アメリカ新作家賞、1969 年アメリカ国立芸術基金賞、1986 年アドルフ&エッシャ ー・ゴットリーブ財団賞。主な収蔵先にグッゲンハイム美術館(ニューヨーク、ニューヨーク、ア メリカ)、ニューヨーク近代美術館(ニューヨーク、ニューヨーク、アメリカ)、オルブライト= ノックス美術館(バッファロー、ニューヨーク、アメリカ)、ベルリン国立美術館(ベルリン、ド イツ)、チューリッヒ構成美術・具象絵画財団(チューリッヒ、スイス)、東京国立近代美術館 (東京)、国立国際美術館(大阪)など多数。
竹内 絋三(たけうち・こうぞう)
1977 年兵庫県加東市生まれ。現在、兵庫県にて制作。2001 年大阪芸術大学工芸学科陶芸コース卒 業、2003 年岐阜県多治見市陶磁器意匠研究所修了。2001 年より精力的に数多くの個展やグループ 展を国内外で開催。現代美術 艸居では 2016 年個展「Discover」の開催歴あり。受賞歴として 2005 年第 27 回⻑三賞現代陶芸展奨励賞、2016 年神戶ビエンナーレ現代陶芸コンペティション奨励賞。 主な収蔵先にボストン美術館(ボストン、マサチューセッツ、アメリカ)、ヴィクトリア・アン ド・アルバート美術館(ロンドン、イギリス)、チェルヌスキ美術館(パリ、フランス)、アナドル大学美術館(エスキシェヒール、トルコ)、兵庫陶芸美術館(丹波篠山、兵庫)、世界のタイル 博物館(常滑、愛知)、茨城県陶芸美術館(笠間、茨城)等。
出和 絵理(でわ・えり)
1983 年石川県かほく市生まれ。現在石川県金沢市で制作活動。2008 年金沢美術工芸大学大学院美 術工芸研究科修士課程修了、2016 年金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科博士課程修了、博士号 (美術)取得。日本各地及び韓国にて個展、グループ展の開催歴あり。受賞歴に 2010 年第 57 回フ ァエンツァ国際陶芸展ファエンツァ賞受賞。収蔵先に金沢美術工芸大学(金沢、石川)、ファエン ツァ陶磁国際美術館(ファエンツァ、イタリア)がある。
浜名 一憲(はまな・かずのり)
1969 年大阪府生まれ。現在千葉県いすみ市を拠点として制作活動。1988 年農業高校卒業後、カリ フォルニア州サンディエゴへ留学。帰国後、東京にてスニーカーショップや飲食店を経営する。作 陶しする傍ら、米の自然栽培やアンチョビソースを製造販売する。Curatorʼs Cube (2018 年・2020 年、東京)、Blue Projects、Blue Mountain School (2019 年、ロンドン) などで個展を開催。 その他、村上隆によるキュレーション展(2015 年)や、横浜美術館 (2016 年)、十和田市立現代美 術館 (2017 年) などの美術館でのグループ展にも参加している。
Sara Flynn(さら・ふりん)
1971 年スコットランド、コーク州生まれ。現在、北アイルランド、ベルファストにて制作。1992 年クローフォード・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン卒業(コーク、アイルランド)。 2019 年に現代美術 艸居にて個展開催。主な受賞歴として、2005 年アイルランドデザイン・クラフ ト協議会研究開発賞受賞、2006 年アイルランドデザイン・クラフト協議会外遊奨学金賞、2007 年 アイルランドデザイン・クラフト協議会外遊奨学金賞、2010 年ピーター・ブレナン・パイオニアリ ング・ポッター賞、2016 年ゴールデン・フリース・アワード優秀賞、2019 年ゴールデン・フリー ス・アワード入選など。主な収蔵先にヴィクトリア・アンド・アルバート美術館(ロンドン、イギ リス)、ガーディナー陶磁器博物館(トロント、カナダ)、ハント博物館(リマーリック、アイル ランド)、フィッツウィリアム美術館(ケンブリッジ、イギリス)、シカゴ美術館(シカゴ、イリ ノイ、アメリカ)、アイルランド国立博物館(ダブリン、アイルランド)、クロフォード市立ギャ ラリー(コーク、アイルランド)等多数。
尹 煕倉(ゆん・ひちゃん)
1963 年兵庫県生まれ。現在東京で制作。1988 年多摩美術大学大学院美術研究科修了。1995 年文化 庁芸術家在外研修制度にてイギリスに 1 年間滞在制作。2010 年文化庁新進芸術家海外研修制度の特 別研修により大英博物館にて調査・研究。現在は多摩美術大学美術学部工芸科教授。2018 年に現代 美術艸居で初個展。主な収蔵先は寺田コレクション(東京)、東京オペラシティアートギャラリー(東京)、茨城県陶芸美術館(笠間、茨城)、常滑市(常滑、愛知)。 旅客船「guntû (ガンツ ウ)」、兵庫大学 4 号館(兵庫)、静岡県立静岡がんセンター(静岡)など。
李 禹煥(り・うーふぁん)
1936 年大韓⺠国慶尚南道咸安郡生まれ。現在は鎌倉とパリを拠点に活動。1956 年ソウル大学校美 術大学を中退、来日。1961 年日本大学文理学部哲学科卒業。1997 年国立エコール・デ・ボザール 招聘教授。多摩美術大学名誉教授。60 年代後半から制作・理論の両面から「もの派」を牽引する中 心的存在として活躍し、国内外から高い評価を集める。主な個展にハーシュホーン博物館と彫刻の 庭(ワシントン D.C.、アメリカ)、ディア・ビーコン(ビーコン、ニューヨーク)、ポンピドゥ ー・センター=メッス(パリ、フランス)、サーペンタイン・サックラー・ギャラリー(ロンド ン、イギリス)、ラトゥーレット修道院(リヨン、フランス)、エルミタージュ美術館(サンクト ペテルブルク、ロシア)、ヴェルサイユ宮殿(ヴェルサイユ、フランス)、グッゲンハイム美術館 (ニューヨーク、ニューヨーク)など多数。現代美術艸居では 2018 年に個展、2019 年にグループ 展「MINGEI NOW」を開催。受賞/受章歴に 1977 年第 13 回現代日本美術展東京国立近代美術館 賞、1979 年第 11 回東京国際版画ビエンナーレ京都国立近代美術館賞、第 1 回ヘンリー・ムーア大 賞展優秀賞、1991 年フランス文化省よりシュヴァリエ芸術文化勲章受章、2000 年中国・上海ビエ ンナーレユネスコ賞、2001 年高松宮殿下記念世界文化賞絵画部門賞、2002 年紫綬褒章受章な ど多数。2010 年香川県直島に李禹煥美術館開館。主な収蔵先に李禹煥美術館(直島、香川)、東京 国立近代美術館(東京)、京都国立近代美術館(京都)、国立国際美術館(大阪)、北海道立近代 美術館(札幌、北海道)、東京都美術館(東京)、森美術館(東京)、原美術館(東京)、新潟県 立近代美術館(新潟)、滋賀県立近代美術館(大津、滋賀)、和歌山県立近代美術館(和歌山)、 大原美術館(倉敷、岡山)、広島市現代美術館(広島)、福岡アジア美術館(福岡)、福岡市美術 館(福岡)、ニューヨーク近代美術館(ニューヨーク、アメリカ)、ブルックリン美術館(ブルッ クリン、アメリカ)、グッケンハイム美術館(ニューヨーク、アメリカ)、テート・モダン(ロン ドン、イギリス)、ポンピドゥーセンター(パリ、フランス)、旧国立美術館(ベルリン、ドイ ツ)、ドレスデン美術館(ドレスデン、ドイツ)、チューリッヒ美術館(チューリッヒ、スイ ス)、プラハ国立美術館(プラハ、チェコ)、エルミタージュ美術館(サンクトペテルブルク、ロ シア)、M+(香港)、ソウル市立美術館(ソウル、韓国)、国立現代美術館(ソウル、韓国)、 釜山市立美術館(釜山、韓国)、ニューサウスウェールズ州立美術館(シドニー、オーストラリ ア)、クリーンズランド美術館(ブリスベン、オーストラリア)など多数。
追記:私たち艸居アネックスは、世界的な社会正義運動であるブラック・ライヴズ・マターを認識して おり、これを全面的に支援しています。この展覧会は、人種的な視点から理解することを意図したもの ではなく、純粋に白色の形式的な属性という観点から理解することを目的としています。