開催情報
【作家】池田 光弘、田幡 浩一、佐藤 允
【期間】2022年6月18日(土) 〜 2022年7月31日(日)
【開館時間】10:00~18:00
【休館日等】月曜日
【料金】無料
会場
会場名:MtK Contemporary Art
webサイト:https://mtkcontemporaryart.com
アクセス:京都府京都市左京区岡崎南御所町20-1
概要
「窓」は、絵画のメタファーとして語られてきた。窓は、絵画と同じ矩形のフレームをもつ。加えて、部屋のなかに外光が差し込むのは、窓という通路を通してである。ゆえに窓は、光のフレームである。その意味で、窓をメタファーとする絵画とは、光のフレームの謂であった、と言える。画家たちは、この光を捉えること、絵画の矩形のなかに光を封じ込めることに、彼らの実存を賭けたのである。
じっさい、生理学的な観点においても、私たちが普段見ている物は、その物それ自体ではなく、網膜の上に投影・入力されるその物を覆う光であり、光へと変換された情報であったのだから、「光」は、見えることそれ自体、そして絵画という視覚装置を成立させる条件でもあった。だから光が、視覚のみならず、絵画の要件とされてきたのは故なきことではない。
であれば、その逆にある「闇」とは、視覚を封じるもの、不可能にするものである。その意味で闇はいわば、反視覚であり、反絵画であった。光と闇の二項対立は、ゆえに、絵画と反絵画の、視覚と反視覚のさなかに存在する。であれば、朝から夜にかけて光が闇に呑み込まれるように、絵画が絵画でなくなり、見えるものが見えるものでなくなるその閾を描くことは可能だろうか。
ここに参加する三名の作家たちは、このような観点において、絵画と反絵画の、見えるものとそれを不可能にするものの閾を描くことに専心してきたと言えるかもしれない。
夜明けを思わせる時間、すなわち複数の時間の層が重なり合う、兆しや予徴に満ちた時間のなかから立ち上がるイメージを描く池田光弘。入射角によって物のあり方が変幻する視覚装置のように、見えるものと見えないものが多重にずれ重なり、イメージの離散と集合からなる運動を描く田幡浩一。あらゆるものが渾然一体となり、現実のイメージ(目に見えるイメージ)と、現実の底に蠢くイメージ(目に見えないイメージ)との区別を画面上で抹消させるように描く佐藤允。
この三名の作家が描くのは、そのような別の場への移行、閾である。彼らは、光としての絵画ではなく、むしろそれを不可能にする別の力にとりつかれてきたように見える。それを闇と呼ぶのは安直に過ぎるかもしれない。だが、そこには闇の閾と呼ぶほかない不穏な力が満ちている。
池田 光弘
1978年北海道生まれ。2006年武蔵野美術大学大学院修了。京都芸術大学准教授。
「畏怖の原理」を池田は絵画の制作を通して構造的に理解し、再現しようと試みているのではないか。
イメージ、文学、宗教、文化など様々なものが生み出されるその原初的な芽生えの場としての絵画を描く。
2013年ポーラ美術振興財団在外研修員(ベルリン)。2007年「VOCA 展 2007」VOCA奨励賞。 主な展覧会に、2020 個展「dawn」Satoko Oe Contemporary、2012年個展「location/dislocation」シュウゴアーツ、2010年「絵画の庭」 国立国際美術館、など。
佐藤允
1986 千葉県⽣まれ。2009 京都造形芸術⼤学芸術学部情報デザイン学科先端アートコース卒業。
パーソナルな問いを描く事で、自らや人、そして世界を理解しようと佐藤は努めているのではないだろうか。時には過剰とも感じる緻密な鉛筆の線描写や独特の筆致によって、オブセッション、恐怖、恋愛などを画面に描き出す。
主な展覧会に、2022年「111 / トリプルワン」KOSAKU KANECHIKA 東京、2021年 「⼤林コレクション展『Self-History』」WHAT MUSEUM 東京、「Daily Cat Essen」Ruttkowski;68 パリ、2019 「Ataru Sato」Office Baroque ブリュッセルなど。
田幡浩一
1979年栃木県生まれ。東京藝術大学美術学部先端芸術表現科を2004年に卒業。2006年に同大学の大学院美術研究科油画専攻を修了。現在はベルリンを拠点に活動。
田幡は目の前にある対象が内包する多様な側面を一つに収斂させることなく、同時に流れえた時間と空間におけるそれらの別の在り方を、「ズレ」を通して作品に表出させる。
主な展覧会に2017年「Art meets04 田幡浩一/三宅沙織」Arts Maebashi 群馬、2016年「one way or another」ギャラリー小柳 東京、2015年「Scape」大和日英基金 ロンドン、2015年「Drawing Biennial 2015」Drawing Room ロンドンなど。