“ フォアグラ ” カワトウ 個展

Art Picks TOPに戻る Art Picks TOP 前のページに戻る Back
001

開催情報

【作家】カワトウ
【期間】2018年5月24日 (火)ー6月3日(日)
【開館時間】13:00〜19:30
【休館日等】月・木曜日・祝日
【料金】無料

会場

会場名:gallery main
webサイト:http://www.gallerymain.com/exhibition2018/kawatou.html
アクセス:〒600-8059 京都市下京区麩屋町通五条上ル下鱗形町543-2F
電話番号:075-344-1893
開館時間:13:00 – 19:30
休館日等:月・木・祝日

概要

たった今、無機質に重なった歪んだ風景を掴み損ねた。春の怠慢な陽気と感傷的な日常が見事に肥大した私の肝臓をこれでもかと袋叩きにしたせいかもしれない。写真になれば全て報われると思っていた。でも、何も変わらなかった。変わるはずがなかった。善良と邪悪の間に立ちはだかる純真無垢な高速バスが逢魔時を切り裂くようにただ真っ直ぐと進んでいく。冷え切った窓ガラスに映る淀んだ豊麗線は私の指針となり得たかもしれない。喜怒哀楽を剥き出しにした電光掲示板に集まる哀れな神秘主義者達の華やかな旋律にたじろぎ、嘘で塗り固められたボーダーラインに足元を掬われてしまった彼女が咄嗟に差し出した左腕はとても美しかった。青味がかったチキンカレーを背後から勢い良く流し込み、甘噛みを施した万華鏡を何千回と覗き込み、優雅でけばけばしい光景を脳裏に焼き付ける。土砂降りのディズニーランドで冷め切ったココナッツミルクを自然派甘味料たっぷりの清涼飲料水で流し込み、大袈裟な誘い笑いと不貞行為が取り柄のドナルドダックがサイケデリックなパレードを喜色満面な赤ら顔で踊り狂う。ゆっくりと追想されるけたたましい奇妙な映像に心躍らせ、才色兼備の阿婆擦れプリンセスと軽薄でアヴァンギャルドなドン・キホーテが満身創痍の下劣な日常を享受し始めると、極限まで刈り上げられた頭蓋骨をひび割れた右手で何度も摩りながら、国道55号線をただただ南へ下っていく。目的地はいつもの場所。そこにはこれといった特別な何かが在るわけではない。そこはかとなく漂う開放感に導かれるように無性に行きたくなることがある。不衛生な生活環境を抜け出すためなのか、屈折した自尊心に耐えることが出来なくなったのか、よく分からない。魑魅魍魎に怯えながら、強靭な肉体から繰り出される弱々しい猫パンチにひるむことなく先を急ぐが、季節外れの疑似晴天と聞き覚えのない般若心経に幾度となく苛まされ、錆びついたバリカンを岩肌に叩きつけた。デザート感覚の生ハムで巻いた冷凍ハンバーグが大好物の痴呆症の獣医師が、最先端の内視鏡を巧みに駆使して私の胃袋から仮死状態のアニサキスを一気に引きずり出すと、眩しく香る金木犀は色めき立ち、無味乾燥でキャッチ―な爆音が脳内に響き渡り始めた。鼓膜は爛れ、眩暈を忘れ、糖尿病促進食品に身を任せ、色鮮やかな死化粧に写し出された私の浅はかな夢の続きと、猛烈な直射日光とけたたましい金切り声で無理矢理引きずり起こされた淡い期待が、不貞行為に勤しむ中肉中背のヘルシー志向の群衆に晒される。純粋培養に犯されたいけ好かないイメージを懸命に羅列しながら、風の便りに聞いた薀蓄を噛み砕く。耳が腐敗するほど講釈をたれてくる生糞坊主を懸命に振り切り、毒々しいポテトサラダを廃棄するノーブラ老婆の色褪せないセルフポートレートに視界を奪われ、臨時更新された思い出に兎に角いつまでも浸っていたかった。出来そこないの我が子達を幾度となく連写しまくる緩めのワンピースとストローハットのママ友達の傍らにはお決まりの人工トイプードル。そんな見飽きた滑稽な青写真を目の当たりにしながら、ふと入った半島の中華料理屋。そこで働くポニーテールのナミビア人の屈託の無い仏頂面が私の錆び付いた感情を揺さぶり続け、我が物顔の回転卓にずらりと並んだ凝固した回鍋肉、微炭酸の小籠包、そして乾ききった北京ダックが過重労働に虫食まれた胃袋をゆっくりと満たしていく。極度の吐き気と偏頭痛に気を良くしたのか、気付けばそこは煌めく夜だった。再構築される新しい常識に翻弄された私は血眼になりながら浅く、限りなく浅く潜っていく。溺愛した自分を殺さぬように。

カワトウ|Kawatou

1983年宮崎県生まれ。
プロセールスマン、全くの無名。これといった受賞歴は無し。痛めた左肘もようやく完治。 大阪を拠点に活動。
主な個展に「KEIHANSHIN FRONTIRE ZAPPING」(Port Gallery T)、「Chocomint Pink Salon」(galleryMain)など。

« Art Picks TOPに戻る « Art Picks TOP
助成: