開催情報
【作家】大槻 睦子
【期間】2022年5月31日(火) ~ 6月5日(日)
【開館時間】12:00-19:00 (最終日のみ17:00まで)
【休館日等】月曜日
【料金】無料
会場
会場名:ギャラリーヒルゲート 1F
webサイト:http://www.hillgate.jp/
アクセス: 〒604-8081 京都市中京区寺町通三条上ル天性寺前町535
電話番号:075-252-1161
概要
大槻 睦子 Ohtuki Mutuko
1956年 京都市に生まれる
1978年 京都市立芸術大学美術学部日本画科 卒業
1980年 京都市立芸術大学日本画専攻科 修了
1983年 奈良芸術短期大学 日本画コース 勤務
1988年 第15回 創画展 初入選
創画会賞・創画会春季展賞・京都市長賞
現在 創画会准会員 奈良芸術短期大学特任教授
2014年、私は現代詩を代表する詩人の一人である金 時鐘(キム シジョン)さんに出会いました。そして翌年の夏、金さんに導かれて詩人や小説家、詩の仲間たちと共に信州旅行へ行きました。
無言館では戦死した美大卒の若者たちの無念。ダム湖では英米の捕虜や徴用工たちの理不尽な死。満蒙開拓団の悲惨な末路。松代象山地下壕の生々しいノミの跡。そしてまた信州は昭和農業恐慌で売られて性奴隷になった少女が多数出た地でもあります。
「時は過ぎ去ってゆくものですか?その場にとどまっているのではありませんか?」という金さんの問いを自分の心にも問うて風景を見ると、信州の山々や湖には理不尽な目に遭った人々の魂が沈んでいるような気がしました。
その後数年間、私は信州に写生に通って魂の痕跡を探し、その魂に寄り添う方法を探してきました。ところが、ふと自分のまわりを見渡すと、私の現在の生活の周辺にも理不尽な目にあった人たちが大勢居ることに気づきます。フタをして無かった事にして、見えないふりをして生きていくのはいけないことだと私は強く思っています。
ただ思うこと、絵を描くことしか出来ないけれど、そんな魂たちに少しでも寄り添いたいと願っています。
大槻 睦子
村
金 時鐘
自然は安らぐ
といった君の言葉は改めなくてはならない。
しずけさに埋もれたことのある人なら
いかに重いものが自然であるかを知っている。
ナイルの照り返しに干からびながらも
なお黙りこくっているスフィンクスのように
それは誰にも押しのけようがない
深い憂愁となってのしかかっている。
取り付いた静寂には自然とても虜なのだ。
自然は美しい、という
行きずりの旅ごころは押しのけねばならない。
居着こうにも居着けなかった人と
そこでしかつなぎようがない命との間で
自然はつねに豊かで無口だ。
喧噪に明け暮れた人になら
知っているのだ静寂の境がいかに遠いかを。
一直線になぜ蜥蜴が塀をよじり
蟬がなぜ千年の耳鳴りをひびかせているかも。
出払った村で
いよいよ静寂は闇より深いのだ。