馴れ初め丁場:田中秀介

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tanaka_omote

開催情報

【作家】田中 秀介
【期間】2021年10月9日[土]・10日[日]・11日[月] / 16日[土]・17日[日]・18日[月]
【開館時間】12:00〜17:00
【休館日等】-
【料金】入場無料

https://www.galleryparc.com/pages/exhibition/ex_2021/2021_1009_tanakashusuke.html

会場

会場名:オーエヤマ・アートサイト
webサイト:-
アクセス:〒629-0141 京都府南丹市八木町八木鹿草71「八木酒造」内
電話番号:-

概要

ギャラリー・パルクは、2020年より主催する『すべ としるべ』プロジェクトとして、京都府南丹市八木町に残る築400年を超える旧酒造を会場に、「田中秀介:馴れ初め丁場 / Begining of love」と「守屋友樹:蛇が歩く音 / walk with serpent」を開催いたします。

『すべ としるべ』プロジェクトは、変容していくこれからの社会状況の中で、「展覧会」という機会をよりタフに起動させていくための方法の開発・獲得を目的に取り組むプロジェクトで、昨年に続き2回目の開催となるものです。>すべとしるべ 2020

「展覧会」とは、アーティストが表現(すべ)を社会に向けてひらく標(しるべ)であり、また鑑賞者は作品と空間・時間をともにするなかで、それぞれにとっての方法(すべ)を発見する「体験」を得る機会・場であるといえます。
しかし、表現と社会、表現と鑑賞者が直接的に触れ、接することによる体験を必然とする展覧会という形式は、それゆえに今日の社会状況の影響を受けやすく、また鑑賞者からのアクセシビリティも低下せざるを得ない状況にあるといえます。
本プロジェクトは京都府南丹市八木町に残る築400年を超える旧酒造を会場に、田中秀介(美術家)と守屋友樹(写真家)による、それぞれ6日間の公開展示と、この展示に取材した麥生田兵吾(写真家・映像作家)と今村達紀(振付家・ダンサー)による映像、野口卓海(美術批評・詩人)の編集・制作による記録物とにより構成されます。こうして従来の「展覧会」と「その記録」という不可逆的な補完関係に切れ目を入れることで、ひとつの展覧会を起点に、映像・記録のそれぞれが自立した眼差しから作品や表現を発見・解釈し、それぞれの媒体の特性をもって「つくる・のこす」ことに取り組みます。

田中秀介は自身が取り組む絵画制作にまつわる思考の延長として、支持体となるキャンバスから矩形を排した、いわゆるシェイプドキャンバスによる作品を会場に持ち込みます。酒造りの機械や什器とともに、かつての作業の痕跡や気配が残る旧酒造の巨大な会場に配されたシェイプドキャンバスによる絵画は、いずれも鑑賞者の視点によって前景(画面)と後景(背景)の関係に変化が起こります。いわば田中の試みは、作品・空間・鑑賞者の関係によって常に変化し、展覧会という場で起こることが作品であるといえます。
会場ので公開は2021年 10月9日[土]・10日[日]・11日[月]・16日[土]・17日[日]・18日[月]の6日間。映像と記録物は本年12月に公開予定です。

プロジェクト『すべ としるべ』では、展覧会を異なる視点、異なるメディアによる自立した記録を「つくる・のこす」ことで、それらが読み出される時に「そこ」に新たな体験を「おこす」ことを目指して取り組みます。展覧会という体験が、記録によってより広く、より遠くに作品や表現を「ひらく」ことの可能性に目を向け、表現がこれからの社会に対応しながら、より強く起動するための(すべ)を編み出していきます。是非ご注目ください。

「馴れ初め丁場」田中秀介
今年の寒さが残る頃、すべとしるべのお話を頂き下見のため初めて旧八木酒造にお邪魔をした。私は今回に至るまで酒造場という場所に訪れた事が無く、これまでに得た僅かな知識を接合させ、勝手な酒造場に思いを馳せ現場に赴いた。思っていたものとは一致しないものの、その現場に残置された機材や道具、場の説明を受けると、たちまちここは酒造場であったと疑いなく思い込める。思い込みもひとしお、今一度辺りを歩き見渡す。先ほどまで気づかなかった現場の詳細が徐々に克明となってくる。現場で従事していた方々の痕跡、機材や道具の位置、大きさ、形、色、これら一つ一つが目新しく、またそれらの由縁を探ることは容易くない。今しがた受け取った知見だけでは計り知れないこれら酒造場を為す実態が、私の抱いていた酒造場に更新を促す。
私は今回、束の間この場を更新しようと思う。絵をもってこの場の計り知れなさを際立たせ、またそれにより、絵の持つ効力を確認したい。ここは鑑賞を想定した場ではなく、絵を見る上で十分な環境とは言えない。しかし、辺りに見受けられる機材や道具は十分なほど感じ取れる。絵も同様、適所に配置できれば、絵の持つ物体としての一面がこの場において効果的に機能し得ると考える。私はこれまで矩形の作品を発表してきたが、それに加え今回、変形の作品も発表する。これまでの矩形作品では結果的に場が描かれていた。今回の変形作品では場を示す要素は無く、対象物のみ描かれている。背景を取り払うことにより、作品が展示される状況とより密接に関わる事を目的とする。
現場をしつらう事で、他の場を示す絵、絵とこの場の交わった有様、この場に司る酒造場という前提。大きくこの三つを示し、作用し合わせる事でこの場での目的を果たしたい。

Statement
寝て、起きて動きだす。動き出すと見渡す。見渡し、それは自発的か偶発的か、そこの何かと対峙する。
対峙する事でそれまで各々固有の方向性を保ちながら流動していた物事が、一挙に私の眼前に一つの光景として立ち現れる。
それはあまりに複雑に入り組んでいるものの、あからさまに一つとして立ち現れる。そして瞬く間に更新され、全く同じ光景に出会える事はない。
この事象を当たり前だとか、当然と言葉をあてがう事は可能だが、私にとってその都度一度きりの光景であり、驚きを持って迎え入れてしまう。
矢継ぎ早にくまなく辺りを確認するも、分かる事はその光景が歴然とそこにあるという事だけである。
すぐ目前に欲するものがあるのに、無理解さや取り込めないもどかしさが残る。この光景を腑に落とす手段として、光景の体現に取り掛かる。
この体現への取り組みが私にとって、描く事となる。
結果、描かれたものは何を指し示かわからない光景から、何かを指し示す光景へと体現され、腑に落ちていく。

田中 秀介

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