開催情報
【期間】2019年12月13日(金) ─ 12月29日(日)
【開廊時間】11:00~19:00 / 金曜日のみ20:00まで
【料金】無料
【定休日】月曜
http://galleryparc.com/exhibition/exhibition_2019/2019_12_13_yamashita.html
会場
会場名:Gallery PARC
webサイト:http://galleryparc.com/index.html
アクセス:〒604-8165 京都府京都市中京区烏帽子屋町502 2F〜4F
電話番号:075-231-0706
概要
日本画家であり、東洋絵画修理技術者(国宝修理装潢師連盟外部技術登録者)として活動する山下和也(やました・かずや/1978年・大阪生まれ)は、2003年に京都嵯峨芸術大学付属文化研究所研究生を修了後、日本・中国の古典絵画の模写と文化財修復で培った技術と経験をベースに、日本の歴史や文化、思想を顧みながら、伝統芸術と現代芸術を捉えなおすことを主眼に作品を制作しています。近年は特に水墨表現に着目し、目には見えない「気配」のようなものを、淡墨とほんの僅かな筆致、余白によって表現する罔両画(もうりょうが)に取り組んでいます。また、墨を用いてアクションやパフォーマンスの領域を横断する、8世紀の中国の芸術表現「破墨」について考察し、神楽舞手、ファッションデザイナー、美術家とともに、現代にその再構築を試みる「破墨プロジェクト」を2018年より企画するなど、幅広い領域での活動を続けています。
本展の構成において、その中心となる罔両画(Ghost style painting)は、中国南宋時代に禅僧の余技として生まれた絵画のひとつであり、極度に薄い墨と僅かな筆致で描かれた消え入るような見え方から罔両(魑魅魍魎、精霊)と名付けられるものです。罔両画やその系譜にある牧谿(もっけい/生没年不詳。13世紀後半、中国南宋末元初の僧)の作品は、室町時代の足利将軍のコレクションである東山御物に多く所蔵されるなど、狩野派をはじめ、長谷川等伯、俵屋宗達など、日本の水墨画史上に多大な影響をあたえたものですが、以降600年に渡って主に取り組む作家はおよそいないとされています。山下はこの罔両画を『「幽玄」や「余白」といった日本の美意識を感じることが出来るものであり、東アジアや日本美術史、室町文化やその美意識を再考するうえで、とても重要な絵画』と考え、水や素材の持つ性質や現象を活用して描くオリジナル技法へと展開しています。
山下の罔両画による作品を中心に構成される本展は、「テキスト」をもうひとつの重要な構成要素として扱います。ロラン・バルト、フィオナ・タン、森鴎外、土方巽など、会場に配されるテキストは、いずれも過去に全く別の目的や文脈で書かれたものの断片であり、直接的に個々の作品を補足・補完するようなものではありません。しかしながら、本展においてこれらは、誰の、どのような言葉であるかという背景も含め、作品の鑑賞体験に強くはたらきかける内容が選ばれています。繊細な濃淡やかすかな筆致によって描かれる山下の罔両画は、そこに射す光と、光を受ける紙との狭間に淡く「絵」が存在するかのようです。また、僅かな変化で緩やかに見え方がうつろうその線は、鑑賞者の身体や記憶・経験によって異なる景色をうつしだすものであり、「絵」は線と鑑賞者の狭間に存在するものであるともいえます。
本展は、作品とテキストが、鑑賞者によって直線的・平面的な関係のみならず、立体的な関係性へと展開することを企図して構成されています。また、そうして作品と鑑賞者によってつくられたパースペクティブ(空間、視座)を、鑑賞者自らが泳ぎ・漂うような体験をしていただければと願っています。鑑賞者が作品(他者)の中に自らを発見する時、そこには個人や国、時代を超えた「私たち」が立ち上がるのではないでしょうか。そして、「私たち」はその向こう側(behind)を眼差すことを可能とするのではないでしょうか。