internal works / 境界の渉り:むらたちひろ

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開催情報

【作家】むらたちひろ
【期間】2018年6月15日[金] ─ 7月1日[日]
【開館時間】11:00~19:00(金曜日のみ20:00まで)
【休館日等】月曜
【料金】無料

http://www.galleryparc.com/exhibition/exhibition_2018/2018_06_15_murata.html

会場

会場名:Gallery PARC
webサイト:http://www.galleryparc.com/
アクセス:〒604-8165 京都市中京区烏帽子屋町502 2F〜4F
電話番号:075-231-0706
開館時間:11:00~19:00(金曜日のみ20:00まで)
休館日等:月曜日

概要

 Gallery PARC[グランマーブル ギャラリー・パルク]では、2018年6月15日(金)から7月1日(日)まで、むらたちひろによる展覧会「Internal works / 境界の渉り」を開催いたします。

 美術作家・むらたちひろ(1986年・京都生まれ)は、「染色」への探究心を始点に、「染める/染まる」という行為・現象に着目した作品制作に取り組んでいます。ロウケツ染や型染を応用した独自技法により、一度染めあげた図像を水で滲ませることで日々移り変わる心象風景を描いた絵画作品を発表してきたむらたは、近年に染色への眼差しをより広く・深める作品制作に積極的に取り組んでいます。今展タイトルにもある【internal works】とは、「染める/染まる」を物理的な側面だけでなく、精神的な現象・行為とも解釈し、「本質的な・内在的な・体内の」というニュアンスを含む[internal]という語を合わせた造語であり、近年のむらたの興味と視点を表す語であるといえます。

 「染める/染まる」は染料や繊維、粒子、引力などの物質・科学に拠る現象であり、染色は長い歴史の経験からそれらを技術に昇華させた行為であるといえます。また「染める/染まる」は私たちの心や精神の内に、あるいは現在の世界の様相にも見ることができる現象・行為であるともいえ、むらたはミクロとマクロの視点、あるいは物理的・精神的な側面からの視点によって染色を捉え、解釈することで、その多様な重なりの「内と外」に作品を成そうとしています。

 むらたのこうした眼差しは、近年の取り組みに見ることができます。2017年の「Internal works / 水面にしみる舟底」では、デジタル写真をインクジェットプリントした布に裏面から水を与え、イメージを「こちら」に引き寄せ、私たちの記憶や認識の揺らぎを染色という現象に置換してみせた作品を発表。2018年の「Internal works / 満ちひきは絶え間なく」では、染料が繊維の毛細管現象により染み上がる様により、単一と思われた色に多様な「色」が含まれていたことを明らかにし、私たちが「ひとつ」とすることで見落としている「多様性」という存在を示します。また、同一の現象を用いた作品として、布を折り紙の二艘船の形に折り、染料と水に浸けることで次第に多彩な色が現れる様子をインターバル撮影による映像作品として展開した作品では、染色という結果が持つ不可視のプロセス(時間)そのものまでを作品へと展開しています。

 とりわけ、2017年の「未来の途中プロジェクト 未来の途中の、途中の部分」で発表された作品《境界 borders / boundaries》は、いくつかの極から異なる色が滲み、ぶつかり、互いに染め合い、いつしか境界線の消失した曖昧な色面を布に留める作品とともに、「旗のイメージ」が重ねられたものです。この「あちら」と「こちら」という『境界』を持ちながらも曖昧に混じり合い、混じり合いながらも決してひとつになることはない様相には、染色の持つ現象の美しさ、「染める/染まる」が持つ強さや弱さとともに、あるいは「個 集団」、「過去 未来」、「善 悪」、「生 死」といった、極に固定化して捉える私たちの世界もまた、揺らぎ・震える豊かな曖昧さの中に在ることをイメージさせます。

 本展「Internal works / 境界の渉り」は、むらたの「染色」への多様な眼差しのひとつの合流点として、再びこの「境界」に焦点を合わせて構成されます。それは色と色の滲みやせめぎ合いに置換された「境界」という「線や図」を布に描き示すことではなく、自身と世界を含んで揺らぐ「境界そのもの」を出現させようとしているかのようです。そして、それは[染める/染まる][うつす/うつされる][地/図]などの関係が『分かたれながらもひとつとなっている』染色だからこそ可能なものかもしれません。

 「染める/染まる」は布の上だけでなく、私たちの「内と外」のあらゆるものに見られるもの・ことです。そして、この当たり前の現象において、染色の技術は言い換えると「染めない」技術、あるいは定着させる技術であると言えます。むらたは自身の染色から、一旦はこの技術を遠ざけることで「そこで何が起こっているのか」を見つめ直し、再び「染」を捉えようとしていると思えます。むらたの「染」は、私(内)と世界(外)における「染める/染まる」の透明な現象・行為に色を与え、写し出しているとも思えます。鑑賞者は作品に目を凝らし、眺め、想うことで「ここ(私と世界)で何が起こっているのか」へと視点を移すとともに、いつしか内も外もない境界のただ中に位置させられることで、「あちら」と「こちら」を否応なく行き来する「眼差し」そのものを体験することができるのではないでしょうか。

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