Colors -染めの世界・八幡はるみと卒業生-

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開催情報

【出展者】高ユニ、羽毛田優子、川野美帆、江島佑佳、山元桂子、宮田彩加、井上康子、塩見友梨奈、小野由理子、野村春花、松本圭祐、廣田郁也、八幡はるみ
【期間】2021年09月25日(土)〜 2021年10月06日(水)
【開館時間】11:00~18:00
*完全予約制
https://colors-kyoto.peatix.com
【料金】無料

https://www.yahataharumi.com

会場

会場名:京都芸術大学 人間館1階 ギャルリ・オーヴ
webサイト:https://www.kyoto-art.ac.jp
アクセス:〒606-8271 京都市左京区北白川瓜生山2-116
電話番号:075-791-9122(代表)
開館時間:11:00~18:00
休館日等:-
  

概要

展覧会に寄せて

2021年1月
展覧会をする。退職する師を囲んでということらしい。そんな企画をしてくれる卒業生は大人である。気遣いに感謝しつつ、師が混じっている気配はできるだけ抑えよう。染織テキスタイルコースで学び、今なお活躍している作家たちにスポットを当てる。そんな展覧会にしよう。
3月
が、メンバー全員を貫くタイトルがなかなか見つからない。それは、この領域にはそれだけ多様な表現を含んでいるということであり、考えてみれば、それはそれとして嬉しい。多様性や変異体を喜び、受け入れ、育んできたことの証だと思う。
かつて
色について授業をしてきた。ただ従来の色彩論的な角度からではない。色には絶対値はなく、むしろ曖昧に捉えることを勧めてきた。たとえば藍で染めた色にも、多種類の名前がある。のぞき色、縹色、藍色、納戸色、、、その名は多い。印象や行為が名称になっている。色はざっくりと理解した方が楽しい。この考え方では再現性に問題があるとする近代の事情によって、色は数値化されることになったが、もともと、色は本来は曖昧な価値。色域は限りないグラデーションである。
4月
という意味を込めて、展覧会名は「Colors」とした。色についての考えに基づいていることを意識して見てほしい。大学で染めを学ぶことで得られる価値や表現はくっきりしていない。出品者の多様性こそ、今回の見せ場である。現代美術、伝統、プロダクト、衣裳、インスタレーション、平面、立体、タペストリー、テキスタイル、バッグ、アクセサリー、 あらゆる表現がオーヴに並ぶ。
5月
「染色」や「染めもの」という言葉の響きは、「今」が置き去りにされているかのような理解も根強い。しかし、ここのメンバーたちは「今」に敏感である。工芸という分野に身を置きつつ活動を続ける人、もうすっかり枠から飛び出てしまった人、いずれも新しい表現を獲得している。メンバーに共通するのは、全員が大学院でたっぷり考える時間を持ったこと、それによって新しい道具や技術も持てたことである。新しい思考は新しい技術を連れて来てくれるし、その逆もある。
7月
自粛を強いられた1年半を経て、再び美術館に行く機会が増えた。そこには、新鮮な作品と柔軟な思考があった。自由な空気で久しぶりに深呼吸ができた。美術は滋養である。繰り返すが、この12人は高い造形力だけでなく、表現へと向かう思考において新しい。これからもずっと鮮度のある表現、表現者であってほしいと願う。「鮮度」 それは本学染織テキスタイルコースの希望であり、教育に対する理想でもあったと、最後に私はささやく。

八幡はるみ

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アーティストと教育

かつて八幡はるみ先生に誘っていただいて、染織コースの大学院ゼミに参加していた時期がある。学位論文の指導を手伝ってほしいということだったと思う。部外者ながら加わったところ、学生たちは意欲があって、関心も染織にとどまらず、ファッション、アート、カルチャーなど広範な領域にわたっており、発表を聞くのも楽しく、授業を心待ちにするようになった。ゼミには大高亨先生とその指導学生も加わり、なかなか賑やかであった。
 今回の展覧会に出品する作家のほとんどが学生としてゼミにいた。それぞれ制作の方向は異なっても、自分の世界を作り上げようと格闘している姿勢は共通しており、見ていてその真摯さに胸を打たれたものだ。
 八幡先生はものづくりの姿勢を熱心に教えられていた。ものづくりに専念するためには、それ以外の夾雑物をいかに取り除き、作業に集中する環境をつくるかが重要である。論文は早めに片づけて、時間はできるだけ制作に使うべし、と考えておられた。私の知る限り、英米のアートスクールは理論のリサーチに時間を使い、そちらが作品よりも評価されることもある。しかし、日本の美大では理屈より、作ることこそ至上であり、どれだけ充実した作品を仕上げるかが最大の勝負であった。作品の講評会では、先生が寸鉄人を刺すような批評を繰り出して、学生のものづくりへの覚悟を問うていたのが印象に残っている。
 また、教室で考えたテーマを深めるため、夏休みに東北地方や島根県の現場をたずねるゼミ旅行に出かけたことも楽しく思い出される。各地の工房や工場、美術館やギャラリーを見学したことは、学生たちにとっていい息抜きになったことだろう。そういえば先生は制作に限らず、恋愛や結婚などプライベートな話題にも触れられていた。女性アーティストにとってなにが大切なのか、細やかな心配りをされていたのだろう。
 当時ゼミでは、染織はアートなのか、クラフトなのか、デザインなのかというテーマをよく議論した。布を作るのは伝統的には工芸の領分だが、美大の中でそれをすることはアートとクラフトというヒエラルキーのなかに置かれ、かつデザインという産業社会の現実と対峙しなければならなかった。アートの道を行くなら素材・手仕事へのこだわりから自由になることが求められ、布から離れることは不可避となる。さらに、工芸が生存できる場所は小さく、デザインに進むのは作家を断念することになりかねず、いずれも学生にとってはアポリアである。染織はそのような困難を宿命的に抱えたジャンルであり、若手作家はそこをどう越え、自分の居場所をつくり出すかが問われるのだ。
 八幡先生も染織作家はなにを世界に発表するのかという葛藤を引き受けたクリエイターである。そしてこの問いにどう応えたのか、作品で示し続けてきた。彼女のもとからこれほど多士済済な作家が出てきたのも、学生たちにその格闘を目撃させたことが大きい。知識としてものを教える<啓蒙>と、自分の存在を通してその背後にある創造の領野を見せる<教育>とは、まったく別ものである。そうした教育の場に立ち会えたことは、学生だけでなく、私にとっても大変な僥倖であった。

京都女子大学教授
成実弘至

関連イベント

ギャラリートーク
「COLORS –それぞれの色–」
八幡はるみと卒業生が自身の作品について語ります。
※オンデマンド配信。9月末日公開予定。

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