ALLNIGHT HAPS 2016後期 「私がしゃべりすぎるから/私がしゃべりすぎないために」
東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)では、2013年より毎年「ALLNIGHT HAPS」を開催し、今年で4年目となります。本企画は、HAPSオフィスの1階スペースにて終夜展示を行い、道路からウィンドー越しに観覧いただく独自の構成となっております。また同時に、若手アーティスト・若手キュレーターの養成を目的としております。
2016年度後期は、自身も画家として活躍する厚地朋子の企画により「私がしゃべりすぎるから/私がしゃべりすぎないために」を開催いたします。展示空間に入ることができないショーケースギャラリーの特性を活かし、彫刻における触覚的な視覚性を問う試みです。
概要
ALLNIGHT HAPS 2016後期
「私がしゃべりすぎるから/私がしゃべりすぎないために」
会期:2016年10月1日(土)~ 2017年2月12日(日) 会期中無休
企画:厚地朋子
出展作家:花岡伸宏/吉田朝麻/對木裕里/山下耕平(会期順)
展示時間:18:00〜9:30(翌日朝)
会場:HAPSオフィス1F(京都市東山区大和大路通五条上る山崎町339)
主催:東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)
協力:taïmatz、TEZUKAYAMA GALLERY、 MORI YU GALLERY
支援:平成28年度文化庁文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業
助成:公益財団法人 朝日新聞文化財団
展示期間
・花岡伸宏 2016年10月1日(土)〜 10月31日(月)
・吉田朝麻 2016年11月8日(火)〜 11月30日(水) *11月19日(土)17:00-「マッスルNTTなどズLIVE」開催!
・對木裕里 2016年12月4日(日)〜 2017年1月4日(水)
・山下耕平 2017年1月12日(木)〜2月12日(日)
企画
【企画:厚地朋子】
厚地朋子は1984年京都府生まれ。
2008年 京都市立芸術大学美術学部油画専攻卒業、2010年 京都市立芸術大学大学院修士課程修了。2010年「絵画の庭—ゼロ年代日本の地平から」(国立国際美術館、大阪)や 2014年「絵画の在りか The Way of Painting」(東京オペラシティアートギャラリー、東京)などグループ展に多数参加。2013年「わたしたちは粒であると同時に波のよう」(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA)や2014年「egØ -「主体」を問い直す-」(punto、京都)などの自主企画展も積極的に企画、参加している。また2015年にはアートブック『辺集』を企画、出版。最新の展覧会は2016年1月の個展「コズミックダンス」(taïmatz、東京)。
現在、京都にて制作、活動中。
企画にあたって
「ALLNIGHT HAPS」の大きな特徴のひとつに、作品と鑑賞者の間に絶対的に立ちはだかるガラス扉の存在があります。鑑賞者が作品に近寄りたくとも許されません。それは何ともはがゆいものです。しかし、実際にALLNIGHT HAPSを鑑賞したときの経験から、これは立体や空間を扱う作品を展示するべきだと思いました。
(本来、様々な角度から鑑賞されるべき作品が一方向からしか鑑賞できず全体が把握できない状況は、王座に君臨する何者かのようで、またコインに描かれた横顔の権力者とどこか似ていると思いました)
ガラスを隔てた作品の在る空間に身体を置けなくとも、視覚は進むことができます。鑑賞者は制約の中で自分の思考と想像力を総動員し作品と向き合います。ものの全てを把握できない状況を積極的かつ肯定的に捉えたい。それは、目で触るかのようであって彫刻を絵画のように見るようでもあります。
高村光太郎は「触覚の世界」で「私にとって此世界は触覚である」と述べています。絵描きである私にとってこのことは非常に新鮮なものでした。私はいささか触覚について無頓着であったと思うのです。そして自分と外界との完全なる分離を改めて認識しました。この展覧会を作るうえで目指したことは、「内側の拡張」と「感覚の総動員」です。見えているものが全てではなく、見ることを通して手触りや音や匂いを感じ、さらにその奥にある何かを必死に感じようとする心と思考のトレーニング、とも言えます。
(個人的な話になりますが、今回、初めて展覧会をキュレーションすることになり、とてもびびっています。やはり自分の日々の制作から切り離して考えることが難しく、結局、自分の絵を考えるように展覧会を考えました。昔、一瞬の気の迷いから立体作品を作ったことがあります。しかし、ある人から「立体作っても結局絵だね」と言われたことがあります。今回の展覧会も「展覧会作っても結局絵だね」となるかもしれません。)
選出理由
手垢や手触りの多い作品を置きたいという欲求がありました。舐め回すように遠くから見つめるだけで、満たされる気持ちと満たされない気持ちの両方をいっきに味わう。夜道に佇んで、想像力という力でガラスを超え、身体の心地よい置いてけぼり感を食らう。そんな風景を思い描いています。
花岡伸宏や對木裕里の作品には手垢や手触りがしっかり残っています。それらは思わず触ってしまいそうになります。山下耕平の作品は、この不自由な自由を楽しむことができる柔らかさがあります。吉田朝麻はさらに音を扱うことができます。音を通して、ガラスを超え鑑賞者と作品が触れ合うことができると考えました。
触覚というものは最も幼稚であり、最も根源的なものであるという高村光太郎の言葉と同時に、私は、いい作品に出会うとどんなメディアであれ触りたくなることを思い出しました。
出展作家
花岡伸宏(はなおか のぶひろ)
1980年広島県生まれ、京都府在住
2006年京都精華大学大学院芸術研究科博士前期課程修了
http://hanaoka.p2.weblife.me//
[個展]
2015 「Statue of clothes」MORI YU GALLERY KYOTO、京都
2013 「無形の排泄」MORI YU GALLERY KYOTO、京都/東京
2012 「回帰 recurrence」Gallery PARC、京都
「入念な押し出し」ギャラリー恵風、京都
[グループ展]
2016 「VOCA展2016」上野の森美術館、東京
2015 「RESONANCE Ⅳ -生活とかたち-」ギャラリー揺、京都
「still moving」京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
2014 「disappear」ギャラリーあしやシューレ、兵庫
「Paraglider」ART SPACE ZERO-ONE、大阪
2013 「ユーモアと飛躍-そこにふれる-あいちトリエンナーレ2013
並行企画事業」岡崎市美術博物館、愛知
「集積と解放」京都府アールブリュッ都ギャラリー
2009 「After School-放課後の展覧会-」元立誠小学校、京都
[受賞歴]
2009 「第12回 岡本太郎現代芸術賞展」特別賞
2006 「JEANS FACTORY ART AWARD 2006」優秀賞
2005 「群馬青年ビエンナーレ’05」奨励賞
*画像:花岡伸宏 《statue of clothes(yellow)》, 2015
吉田朝麻(よしだ あさお)
1984年京都府生まれ、静岡県在住
2007年京都市立芸術大学美術学部デザイン科卒業
2003年「マッスルNTT」名義にて音楽活動開始。ライブや自主リリース、テーマ曲の制作やリミックス等を行う。
2007年京都市立芸術大学 美術学部 デザイン科 プロダクトデザイン専攻 卒業。
2012年より印刷媒体zine(ジン)作りや様々な印刷技術を体験できる場作りユニット「ZING」(ジング)をトモノカナコと結成し、静岡県をはじめ長野県松本市美術館や東京都庭園美術館にて場所作りやワークショップ等を行う。
2014年自身のバンド「マッスルNTTなどズ」活動開始。2枚のアルバムを自主レーベル「百科」よりリリースし各地でライブ活動を行う。
2014年、15年、16年 浜松鴨江アートセンターレジデンス事業に採択され音楽制作や音にまつわる作品制作を行い展示やワークショップを行う。
2014年より鴨江アートセンター主催「鴨江アートバザール」のアートディレクションを行う。
*画像:《コトコロン》, 2015

對木裕里(ついき ゆり)
1987年神奈川県生まれ、東京都在住
2009年武蔵野美術大学彫刻学科卒業
2011年京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了
http://tsuikiyuri.wixsite.com/potato
[個展]
2015 「左みずうみ」Alainistheonlyone、東京
2014 「分け入って、分け入って」古書まどそら堂、東京
[グループ展]
2016 「Identity XII–崇高のための覚書-curated by Taro Amano-」
日動contemporary art、東京
「ここにもアートかわぐち」川口市キュポ・ラ、埼玉
「第11回大黒屋現代アート公募展」板室温泉 大黒屋、栃木
2015 「Feb.」神奈川県民ホール
「それには興味がわかないと思います。」Alainistheonlyone、
東京
「第4回新鋭作家展 本の場」川口市立アートギャラリー・ア
トリア、埼玉
2014 「怪作展」ギャラリー新九郎、神奈川
「第9回大黒屋現代アート公募展」板室温泉 大黒屋、栃木
「面白い技術」清閑亭、神奈川
2013 「怪作展」ギャラリー新九郎、神奈川
「第8回大黒屋現代アート公募展」板室温泉 大黒屋、栃木
「ongoingXmas」art center ongoing、東京
[受賞歴]
2016 「第11回大黒屋現代アート公募展」大賞
2014 「第9回大黒屋現代アート公募展」入賞
「第4回新鋭作家展」優秀賞/川口市立アートギャラリー・ア
トリア、埼玉
2013 「第8回大黒屋現代アート公募展」入賞
2011 「京都市立芸術大学作品展」同窓会賞
*画像:對木裕里《犬の土地》, 2016(photo by Kei Okano)
山下耕平(やました こうへい)
1983年茨城県生まれ、京都府在住
2010年京都市立芸術大学大学院美術研究科造形構想専攻修了
[個展]
2013 「ヒュッテにて」TEZUKAYAMA GALLERY、大阪
2010 「Traverse」TEZUKAYAMA GALLERY、大阪
[グループ展]
2015 「ART KAOHSIUNG」City Suites-Kaohsiung、高雄(台湾)
「The Glory (of phenomenon) : ActⅠ」TEZUKAYAMA
GALLERY、大阪
「See SawとK氏のコレクション展」See Saw gallery +
café、愛知
2013 「わたしたちは粒であると同時に波のよう」京都市立芸術
大学ギャラリー@KCUA
「近所の迷子」taïmatz、東京
「TSCA Rough Consensus」ホテルアンテルーム京都
2012 「OUR HIDDEN PLACES」a・room、京都
「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012」松代
木和田原地区、新潟
「隠喩としての宇宙」ホテルアンテルーム京都/タカ・イシ
イギャラリー京都
「Views of Life」hpgrp GALLERY NEW YORK(アメリカ)
[その他]
2015 アートブック『辺集』企画・出版
[受賞歴]
2010 「京都市立芸術大学作品展」同窓会賞
2008 「京都市立芸術大学作品展」市長賞
*画像:山下耕平《ヒュッテにて》, 2013