GA TALK 039「イサム・ノグチ − イン・ビトウィーン(あいだで)」by ブレット・リットマン(イサム・ノグチ財団・庭園美術館ディレクター)

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GLOBAL ART TALK 039「イサム・ノグチ – イン・ビトウィーン(あいだで)」by ブレット・リットマン(イサム・ノグチ財団・庭園美術館ディレクター)
イサム・ノグチ(1904-1988)は20世紀の偉大な博学者のひとりです。
イサム・ノグチ財団および庭園美術館のディレクターであるブレット・リットマンとともに、ノグチの美的哲学、アイデンティティ、ニューヨーク州アストリアにある彼の美術館の設立、ならびに彼のいくつかの分野横断的プロジェクトについて探ります。

イサム・ノグチは、アメリカ人と日本人の子として、幼いころから文化横断的な情報を非常に多く吸収した人物でした。ノグチはアメリカ合衆国で人種差別と迫害を経験し、日本では反米感情と、彼の作品と意図に対するある種の懐疑的見解に子供のころはもとより、成人したのちも晒されました。彼の人生と作品制作は「文化的ホーム」を見つけることができなかったことに支えられています。この「文化的ホーム」の不在はまた、ノグチが若くして世界中を旅する人となった原因でもあります。彼は1926年にグッゲンハイム・フェローを受賞すると再び合衆国を離れ、世界中を巡り始めました。以降、ノグチは非常に逍遥的で、幾度となく移動しました。彼はまことに数多の旅をし、異文化より多くを吸収した、最初のグローバル・アーティストと言えるでしょう。彼は芸術の成しうることの普遍性に大きな関心を寄せていました。

ノグチの作品に一貫しているテーマは、それがテーブル、ランプ、彫刻そのもの、もしくは庭であっても、全てが彫刻である、ということです。彼はあらゆる空間を、そこに彫刻が存在できるものとして見ていました。ノグチが出会った素材で、気に入らない、あるいは活用できないと感じた素材はひとつとしてありませんでした。そして素材の人為的な区分や、デザインと建築、芸術といった区分に無頓着でした。あらゆるレベルで、楽しみながら大胆不敵に境界線を越えることができました。しかしそれは時として、ノグチのキャリアを損なうこともありました。多くの人は芸術家ではなく、工業デザイナーとしてノグチを認識していますし、他方では、ノグチのデザインは知らずに、彼の公共の彫刻のみを知っている、ということがあるからです。結果として、ノグチ自身の認識としてはすべて繋がった一体であったにもかかわらず、多くの人々のあいだでの自身の認識を、ある種分断してしまうことになりました。

イサム・ノグチ財団と庭園美術館の目標は、ノグチの人生の万華鏡のような側面を再統合し、彼の作品を彫刻、デザイン、ランドスケープ・アーキテクチャ、都市計画、演劇、舞台美術やランド・アートの対話に関連付けることです。そのひとつの方法は、全てを四方囲まれた壁の中に落とし込もうとするのではなく外側に向かう同心円を作ることです。イサム・ノグチ美術館は、ノグチの先導した拡張的思考を踏襲し、地域のコミュニティや委託するアーティスト、ダンサー、哲学者、都市計画家や庭師の協力を通じて、ノグチについてともに考え、彼の遺産をさらに広めていきます。

概要

日時:2023年4月18日(火)19:00 〜 20:30
料金:無料
会場:京都芸術大学 人間館地下1階 映像ホール(オンライン配信あり)
定員:会場100名/オンライン500名
※会場は申し込み不要・先着順/オンライン配信はウェビナー事前登録制
司会:都留ドゥヴォー恵美里
通訳:中山慶

主催:京都芸術大学大学院

講師プロフィール

ブレット・リットマン(Brett Littman/イサム・ノグチ財団・庭園美術館ディレクター)
リットマンは2018年5月よりニューヨーク州ロングアイランドシティにあるイサム・ノグチ財団と庭園美術館のディレクターを務めています。2003年から2007年までMoMA PS1 の副館長、2001年から2003年までデュドネ製紙場(Dieu Donné Papermill)の共同ディレクター、1996年から2001 年までアーバン・グラス(Urban Glass)のアソシエート ディレクターを務めました。
リットマンの関心は学際的です。過去16年間で150以上の展覧会を監督、30以上の展覧会を個人的にキュレーションするなかで、視覚芸術、アウトサイダー・アート、工芸、デザイン、建築、詩、音楽、科学、文学を扱ってきました。2019年と2020年には、ロックフェラー・センターの フリーズ彫刻展(Frieze Sculpture)のキュレーターに任命されました。美術評論家、講師、美術館やギャラリーのカタログの活発なエッセイストにとどまらない、米国および国際的なアート、ファッション、デザイン雑誌での執筆など幅広く活躍しています。
生粋のニューヨーカーであるブレット・リットマンは、2017年にフランスから芸術文化勲章シュヴァリエを授与されました。同年、カリフォルニア大学サンディエゴ校で哲学の博士号を取得しています。

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