展覧会 山本麻紀子「いつかの話 あの人の風」のお知らせ
東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)では、「文化芸術による共生社会実現のための基盤づくり事業」を京都市より受託しています。本年度は文化芸術による社会包摂の取組の実例を広く発信し、その効果を検証するモデル事業として、「ノガミッツ プロジェクト」を実施しております。「ノガミッツ プロジェクト」は、アーティストの山本麻紀子氏が、本事業コーディネーターのあごうさとし氏らとともに、地域の高齢者福祉施設「東九条のぞみの園」を訪問し、利用者や職員、地域の皆様と対話を重ね構想し、展開している取組です。
この度、山本氏が施設利用者との対話をもとに制作した作品を、展覧会「いつかの話 あの人の風」と題して展示する運びとなりましたので、お知らせいたします。会期中にはゲストをお招きしたトーク、東九条のぞみの園の中庭を開放し庭づくりを行うイベントを予定しております。
※ノガミッツ: のぞみのその→「の」が3つ→ノガミッツ から山本麻紀子氏が名付けました。
概要
展覧会 山本麻紀子 「いつかの話 あの人の風」
あなたのいつかの物語。
それは、むかしも今も未来も同時に踏んづける生命の足跡。
今日もそこに風がたつ。
芸術と福祉とは、決してかけはなれた存在ではなく「人の豊かな生き方を追求する」点で通底する考え方を持つのではないでしょうか。社会と人間の関係への異なる視点と手法を持つそれぞれが、豊かさに向け、ともに尊重しあいながら行動することは可能でしょうか?
京都市の「文化芸術による共生社会実現のための基盤づくり事業」の一環として実施する、アーティストの山本麻紀子による「ノガミッツ プロジェクト」は、総合福祉施設東九条のぞみの園の利用者・入居者、職員との対話から構想・展開されています。
このたび、地域の方々の願いで24年前に設立された施設と、数年前から近くに住むアーティストとの出会いから生まれた、作品や物語の展覧会「いつかの話 あの人の風」を開催いたします。
「ノガミッツ プロジェクト」は、作品制作とノガミッツガーデンとから構成され、精神と環境面の双方から、人と生きる場の関係性を考える試みとして、互いに響きあいます。作品の一部は入居者に贈られ、一部はガーデンの土に埋められる予定です。その土で植物が育ち、野菜になり、あるいは心を和ませる花になり、また土に戻るかもしれません。新しい出会いもあるでしょう。育まれるいのちの循環の中に、それぞれの物語や記憶、今この瞬間の生の感覚が接続されることで、施設に関わる方々がより豊かに過ごせる場所になるのではないでしょうか。願いと問いの間で、プロジェクトは進行しています。
展覧会「いつかの話 あの人の風」は、歴史の中で共生社会の実現に向け取り組み続けてこられたこの場所での新たな表現を通し、人や、人だけではない様々なものと関わり、生きることについて皆さんと一緒に考え続けようとするものです。
会期:2019年2月17日(日)~24日(日)※会期中無休
時間:13:00~19:00
会場:元山王小学校 北校舎1階教室(京都市南区東九条東山王町27)
入場料:無料(直接会場へお越しください)
主催:京都市
企画・制作:東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)
コーディネーター:あごうさとし
協力:社会福祉法人 カトリック京都司教区カリタス会 総合福祉施設 東九条のぞみの園/洛東化成工業株式会社/(一社)アーツシード京都
制作協力:小西由悟/Kim Sajik/中村裕太/Kim Song Gi/中谷利明
デザイン:永戸栄大
チラシのダウンロード
展示作品
山本が、施設に住まう人々(=入居者)と対話を重ね、時に言葉だけでなくまなざし、振る舞いなどから抽出したモチーフを中心に、様々なかたちで作品を展開しています。作品は、地域に根ざす草花から色を採集し、糸や布を染める・土をこね、成形し、焼成するといった過程を通じ、人だけでなく自然との対話の中で制作されています。
ノガミッツ ガーデン
地域の方々からの「おすそわけ」の植物によってつくられる「のぞみの園」の中庭。山本が日常生活の中で「植物のおすそわけ」から周囲との新たな関係を見出した体験をもとに、陽の光や風が心地よく入り、人々が集う場所として、のぞみの園の職員・利用者と協働で庭づくりが進められています。
関連イベント
◯オープニング
2019年2月17日(日)17:00〜19:00
会場:元山王小学校
17:00〜物語の朗読
アーティストを囲んで、オープニングを開催いたします。どなたでもお越しください。
◯トークイベント
2019年2月23日(土)15:00〜16:30
会場:京都市地域・多文化交流ネットワークセンター内 希望の家ホール(京都市南区東九条東岩本町31)
スピーカー:小笠原邦人(東九条のぞみの園施設長)/西川勝(臨床哲学者)/山本麻紀子(アーティスト)
司会:あごうさとし(本事業コーディネーター)
アーティスト、コーディネーター、福祉施設長が一堂に会し、ゲストに臨床現場での実践と哲学的考察を重ねている西川勝氏を迎え、それぞれの立場から本プロジェクトについて語ります。
◯みんなでお庭づくりの日
2019年2月24日(日)14:00〜16:00
会場:東九条のぞみの園(京都市南区東九条西岩本町1-1)
施設の中庭を開放し、おすそ分け植物の植え付け・野菜の収穫をいたします。暖かく動きやすい服装でお越しください。
※いずれも無料・予約不要です。直接会場にお越しください。
プロフィール
●山本 麻紀子(やまもと まきこ)
1979年京都市生まれ。京都市立芸術大学・大学院 絵画専攻 構想設計修了。ある特定の場所のリサーチを通して観察や考察を続け、常識や習慣など日常の中で見過ごされている事柄や疑問を糸口にして、他者とのコミュニケーションを発生させるプロジェクトを行う。その一連の過程を、写真、映像、ドローイングなど様々な形式に展開させて作品制作を行っている。
●あごう さとし
劇作家・演出家・(一社)アーツシード京都代表理事。「複製技術の演劇」を主題にデジタルデバイスや特殊メイクを使用した演劇作品を制作する。2014−2015年文化庁新進芸術家海外研修制度研修員として3ヶ月パリに滞在。2019年の開館をめざして、東九条の新しい劇場「Theatre E9 Kyoto」建設プロジェクトを進めている。平成29年度京都市芸術新人賞。
●小笠原 邦人(おがさわら くにと)
総合福祉施設東九条のぞみの園施設長。大学卒業後、一般企業に就職するが、1994年より特別養護老人ホームのアルバイト職員として介護福祉の世界に入る。約5年間、介護職員としてケアワークを実践した後、老人保健施設の支援相談員や在宅介護支援センターの相談員を経て、2006年に東九条のぞみの園に入職。のぞみの園では、地域包括支援センターで主任ケアマネージャー・社会福祉士を担い、2014年より東九条のぞみの園施設長に就任する。
●西川 勝(にしかわ まさる)
臨床哲学者。1957年大阪市生まれ。看護師として長年勤めた経験をもつが、一方で哲学への想いやまず、40代には社会人として大阪大学で臨床哲学を学んだ。後、大阪大学コミュニケーションデザイン・センターの特任教員として11年間、臨床コミュニケーションの研究教育に携わった。現在は大学を離れ、社会の現場で臨床哲学のプレイヤーとして活動中。主な著書に、『ためらいの看護』(岩波書店)、『となりの認知症』(ぷねうま舎)などがある。
お問合せ
東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)
Eメール:info@haps-kyoto.com / TEL:075-525-7525 / FAX:075-525-7522
京都市「文化芸術による共生社会実現のための基盤づくり事業」について
京都市では、文化芸術の力で社会的課題の緩和・解決に取り組む多くの活動事例を踏まえ、文化芸術と社会課題をつなぎ、コーディネートするための人材育成や、文化芸術の取組に着手しようとする際の相談窓口の設置など、文化芸術による共生社会を実現するための取組として、「文化芸術による共生社会実現のための基盤づくり事業」を実施しています。
HAPSは、京都市から「文化芸術による共生社会実現のための基盤づくり事業」の委託を受け、文化芸術の力で様々な立場の人が関わり合うアートプログラムを企画・実施しています。